医師紹介

私と家族を育ててくれたこの土地に、入江病院ができる恩返しとは

松藤会 会長 入江 善一 [京都大学医学部卒業/日本外科学会認定医/労災指定医/麻酔科標榜医]

私は戦中・戦後に少年期を送り、まったく物がない、明日食べる物もないというどん底生活を経験しました。
底辺にいる人間は医療行為すらまともに受けられない、という悲惨な生活を余儀なくされるなか、「こんなことではいけない」と奮起したことが医療を志すきっかけとなったのかもしれません。

中学を卒業後、昼間は商社で働きながら夜は定時制高校へ通いました。
そして周囲からは無謀だと笑われながらも大学入試へ挑みました。
そこで私は医学を学びながら、同時にボート部で汗を流していました。
これはのちに思ったのですが、「ボートを漕ぐ」という行為は「病院で働く」ことにとてもよく似ているのです。

求められるのは個を没し、己が主張を曲げてでもチームの一員として力を一つにし、呼吸を合わせ、同じ方向へと推し進むこと。
“医者がベストを尽くす”とは、ファインプレーヤーとしてのそれを指すのではありません。
医療とはつまり、チームでのみ遂行すべき仕事であると私は考えています。
この地で開業するまでに紆余曲折ありました。決していい思い出ばかりではありません。
しかし今この入江病院に携わっている子ども達は、すべてこの土地で育ちました。
私も子ども達も、この土地で育てられたのです。ここは私にとって故郷と呼んでも過言ではありません。

地域にとって必要とされる病院で在り続けることが、私が故郷にできるこれ以上はない恩返しだと思っています。